6月6日(土) 晴れ?曇り?

監督、それは違うと思います!





06:40 先発衣裳メイク俳優部
07:30 本隊出発
08:00 リハーサル開始 S#17仕立屋・庭先/S#90仕立屋の庭先/S#9路地/S#16仕立屋・茶の間
12:00 出産演技指導 筒井ヤスさん入り
15:00 仕立て演技指導 五十嵐康子さん入り
20:00 終了予定
20:30 小林基行さん、メイク部、監督打ち合わせ

今日は路地住人が総登場して、2つのシーンが撮影される。
原作『白痴』のメイン舞台になる『奇妙な路地』を作り上げるのに、
プロ・アマ問わず東京と新潟で集められた40人近いキャスト。
その大半が登場するため、早朝から大メイク大会が繰り広げられる。
S#17は、”藤村俊二さん扮する仕立屋の稽古を受けに来た女の子が倒れる。
路地中の人間が集まり大騒ぎをして、その子を戸板に乗せて担ぎ出す”くだり。
室内の女の子が倒れる場面から始まるのだが、今日も太陽が沈む前に、
屋外の庭を撮影しきれない可能性が高いため、”路地住人が一堂に集り、
戸板に乗せた女の子を運び出す”下りから撮影。
演技陣は、大半が新潟オーディションで集めた個性あふれる一般の方々。
昼間の屋外にも拘らず、照明の安河内央之氏式蛍光灯ライティングも緻密に準備され、
早朝からの準備にも拘らず、カメラが回ったのはお昼近く。
S#90に入ったのは14:00過ぎ。
”町内中の男と関係をもって、妊娠していた女の子が、仕立屋の庭で出産する”くだり。
前日から手渡されていた絵コンテの分量は、決して多くはないのだが、
手塚組の撮影速度は今や時速0.5カット。
撮影から2週間近く何も言わなかった撮影の藤澤順一さんが、
そっと僕を呼び「このままじゃ撮りきれないよ」と耳元でささやく。
監督と相談する。
監督は絵コンテを見ながら「そうですね。
撮りながらいらないところは削除しますから……。んーないな。
じゃ、芝居を通して撮影して、一遍に2~3カット撮れるところは……。んーない」
結局「全部撮りたいから頑張ろう!」という結論になる。
日が暮れると、ライティングで太陽光を作るいつものパターン。
室内は完全に夜になってから、朝の光を作り撮影。S#9は取りこぼす。
今日は、翌日の撮影に出演するファッション界の有名人達も新潟入りした。
これは、映画のオリジナルシーンで、”空爆を受け廃虚と化した街中で、
最新モードに身を包んだモデルのファッション撮影が行われている”というくだり。
本物のトップモデルの田中久美子、宮本はるえさん達を、
人気ファッションカメラマン小林基行氏が実際に出演して、撮影する。
昼の間は、メインスタッフと基行さんで、焼跡のオープンセットを見学。
映画界とファッション界のスタッフで、ぎこちなく始まった打ち合わせだが、
その内和気あいあいとなり、翌日を楽しみに話し合いは終わった。
そして、事件は夜に起った。
翌日の撮影終了後、ファッションチームは劇中に使うポスターの撮影を、
別のスタジオで行う予定。
その衣裳とメイクの軽いチェックをしようと、集ったのが21:00。
そして、今回のメイクデザイン・衣裳デザイナーがこれもファッション界で、
有名な柘植伊佐夫さんと伊藤佐智子さん。
しかしこの方々は超売れっ子。
打ち合わせの時間がとれず、結局、電話のやり取りしか出来なかったらしい。
撮影を翌日に迎え、いざ顔を合わせて話し合うと、衣裳の伊藤さんが、
「衣裳にメイクが合わない!」と言い出した。
当初の予定では映画のシーンでのメイクがAとすると、その後のポスター撮りは、
衣裳は変えずメイクのみBにする。
しかし、伊藤さんは「Aのメイクに合わせて作った衣裳なので、Bではあわない。
やるならAのままかCにしてくれ」とのこと。
メイクの柘植さん自身は東京に。
現場メイクの小林まさゆきさん・勇見勝彦さんは日頃から、初めての映画の現場で、
気を使い遠慮しながら発言していたのだが、内容が100%ファッションになると、
自分のフィールド。
柘植さんの代理ということも有り、伊藤さんに強行に反論する。
カメラマンの小林さんは、来たその場で激しい論争に巻き込まれ、
取りあえずその場をまとめようと、「元々のコンセプトは、ヨーロッパの××だから
Bでいいじゃないの」と発言。
「でも、作品の質として…」と反論する伊藤さん。
すぐ決着がつくと思っていた基行さんも、混乱して「もちろん、僕が出てきた以上、
クオリティーが下がることはあり得ないし、だけど…」
討論はどんどん深みにはまっていく。
そのうち様々なファッション誌をひっくり返して、
それぞれの美的哲学・仕事における精神論の語り合いが続く。
なんせ、同じ写真を例に挙げながら、結論は全く合わない4人。
非常に有意義でおもしろい内容なのだが、夜はどんどん更けていく。
明日は時間のかかるファッションメイクのため、早朝4:00メイク開始。
助監督も早く収拾つけようとするのだが、最新モード論で議論中のため、呆然と見てるだけ。
それまでじっと見ていた手塚監督は、ファッションの仕事も多く、自ら事態をまとめようと、
みんなの見ていた雑誌を一冊取り上げ、
「僕はこの雑誌のこの範囲なら、コンセプトに合うと思うんですけどね」と言ったところ、
4人そろって、「監督、それは違うと思います!」と初めて意見の一致を見る。
結局、1時間くらいの話し合いの末、Aパターンから変更無しということに落ち着く。
ねむい……。



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